Jul 6, 2010

Why do I love his universe?

「本をたくさん読むんだ。」
と、聞いただけで尊敬の眼差しで見てしまい、
逆に、
「本はあまり読まないんだ。」
と、聞いただけで内心ガッカリしてしまったり。

昔、
爆笑問題がやっていた深夜番組、
『爆笑問題のススメ』という番組が好きだった。
毎回、一人の作家をゲストに呼び、
トークを繰り広げたあと、
「今週のあとがき」という最後のコーナーで、
筑紫哲也の多事総論のごとく、
太田光が彼のコメントで締めくくる30分番組。
あまりテレビに出演しないような珍しい作家達も登場したり。
太田光が読書家というのは有名な話しで、
暗い青春時代を送りながら、
(高校生の頃、学校で一言も話さない日ばかりだったとか。)
多くの本を読み続けているだけに、
彼の読書に対する愛情を尊敬する。
でもそんな彼は村上春樹は好みじゃないらしく、
「どうして村上春樹がつまらないか。」
ということを語ったラジオをまとめて見る。
彼の視点。
・人間を追いかけていない。
・登場人物がみんな自分だけが特別だと思っている。
・そして、彼らはちっとも感情的じゃない。
・とりみだしたりしない。
・涼しげな顔をして、おもわせぶりな言葉ばかり言っている。
・その「おもわせぶりな言葉」を使って通じ合える
 奴らだけが主人公で、それ以外の奴は相手にしない。
・翻訳みたいな会話。
・サリンジャーの会話は外国のものだから、
 かっこ良くて当たり前。
・表層だけなめている。
・本部をとばしているから、涼しいまま終わっちゃう。
・クールな涙だけ。
・結局フィッツジェラルドのぱくり?
・いい年こいて、いつまでノルウェーの森やってるんだ?
・お洒落。
・でも『羊をめぐる冒険』は良かった。
・『ノルウェーの森』は会話がもう・・・ダメ。
・アメリカナイズされすぎ。
・結局、人間が取り乱さない。
 →洗練されすぎて、格好良すぎる。
・都会的でサンドウィッチ食ったりする。
 →しかも自分で作って!!大の男が!!

笑。
色んな人の色んな考えや視点があって、
それでも彼はほとんどの村上作品を読んでいるらしく、
だからこその意見だから納得できる部分もあったり。
結局、
『憧れ』なのかなと思う。
ほとんどの主人公達が、
独自の世界を持ち、
社会とあまり関わらないようにして生きていて、
世間体とは無関係でガツガツさがない。
それに加えて、
彼らはお洒落で、食事にこだわり、
話し言葉もかっこ良かったり。
そこにファンタジーが加わり、
不思議な世界と混ざり合い、
もうなんだか分からないけど、
ただただ憧れてしまう。
私は、
『ノルウェーの森』、
『国境の南、太陽の西』
『羊をめぐる冒険、』
『ダンスダンスダンス』、
『海辺のカフカ』が長編作品の中では好きで、
人気のある、
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、
『ねじ巻き鳥クロニクル』は、
正直、
魅力があまりよく理解できない、
『もったいない』村上ファンなのかもしれない。
かろうじて主人公達が現実の中でとどまって、
右往左往している姿に魅力を感じてしまう。
一番好きな短編は、
『像の消滅』の中の、
『4月のある晴れた朝に
 100パーセントの女の子に出会うことについて』。
もうこれは、
好きすぎて、
ノートに書き写して、
何度も読み返したりした。
ちなみに、
村上翻訳の、
『ライ麦畑でつかまえて』も、
読み疲れしてしまい・・・ダメだった。
村上作品に全く興味がない読書友達に、
『国境の南、太陽の西』を無理矢理貸したら、
「やっぱ私ダメだわ。
 なんで会話がどれも洒落臭くて、
 説明ぽくて、遠回しなの?」と答えが返って来た(笑)
そこがいいのにっ!!
例えば、
この前の日記に書いた『1Q84』の、
小松という一人の男のファッションを、
ああやって表現すること。
タマルと青豆の電話での会話の最後に、
タマルが、
「次回の荷物にマドレーヌを一箱入れておこう」
「それがあるいは時間の流れに良い影響を及ぼすかもしれない」
「ありがとう」
この『マドレーヌ』にしびれたりするんだけどな。。。
村上春樹が作品の中で、
言葉にのせて繰り広げられる、
彼の視点、発想、表現力に、
ポイントポイントで痺れて、
胸がドキドキする。
1つ1つの言葉が、
まるで生きているように、
ピチャピチャと水しぶきをたてて、
私の頭の中で泳ぎだす。
村上作品を読んでいると、
自分もその中にどっぷりと浸かり、
現実との境目が曖昧になる感覚。
「まったく奇妙な世界だ。
 どこまでが仮設なのか、
 どこからが現実なのか、
 その境目が日を追って見えなくなってくる。
 なあ天吾くん、
 一人の小説家として、 
 君なら現実というものをどう定義する?」
「針で刺したら赤い血が出てくるところが現実の世界です。」
 と天吾は答えた。
(『1Q84』③)

ps
200万部以上売れているという『1Q84』。
今、日本で一番影響力のある人物。
このストーリーを、
一体、
どれだけの人が、
どこまで理解できているのだろう?
と、ふと思う。
ちなみに、私は、
もう1度、最初から読み直す必要がありそう・・・(笑)

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